支援者・地裁での第3回出廷

この度、本会議支援者の訴訟(東京地方裁判所 平成20年(ワ)第36662号 損害賠償等請求事件)については、平成21年3月25日(水)午後1時30分より東京地方裁判所で、第2回弁論準備手続(通算第3回)が行われました。

~出廷の実際状況~

当方からは、Rescue会議支援者担当弁護士1人が、被告光栄側からは、委任弁護士3人をはじめとする方々が出席しました。

1.原告第1準備書面の陳述。

2.原告代理人は原告提出の証拠の中、甲23の証拠の作成日付を修正した証拠説明書を交付した。

3.被告代理人が原告第1準備書面3頁8行目(「利用規約が明瞭に表示されている」というためには…の部分)は準則に記載されているものかを尋ねたため、原告代理人は、準則には記載されていないが複数の文献に記載されている旨回答した。

4.裁判官は、被告代理人に次回原告準備書面に対して反論するように述べました。

5.次回期日は、4月23日(木)午後1時30分から、東京地方裁判所民事14部です。

なお、今回我が原告側の答弁の概要は以下のとおりです:


2009年3月25日に法廷が開かれる直前の3月19日に、原告利用者側代理人から、法廷の準備文書を被告KOEI側、そして裁判所に送付した。

~第3回法廷での原告側の答弁~ 計14ページ(他証拠文書多数あり)

[第一頁]— 本案前の抗弁

被告は、平成21年1月23日付答弁書(以下「答弁書」)において、平成20年12月15日付訴状(以下「訴状」)記載の請求の趣旨第1項について、訴状別紙目録の数値が事実であること、特定時点の数値であり変動があることから過去の事実の確認であり、また、何ら紛争解決に資するところがなく、確認の利益が認められないと主張した。

しかし、原告は、原告が提出した訴状別紙目録の通りのキャラクターのデータの事実ではなく、本件キャラクターを使用する権利の確認を求めている。

また、請求において特段の日時を記載していない以上、原告が、口頭弁論終結時における権利関係の確認を求めていることは明らかである。被告の主張は、明らかに失当である。

さらに、被告が、本件キャラクターのデータをその名前が本件禁止条項に該当するものとして削除している以上、原告が今後本件ゲーム内で同様のキャラクターを育成した場合に再度削除される可能性が極めて高いから、原告が本件キャラクターを使用する権利の確認を求めることが原告被告間の現在の紛争を抜本的に解決するために必要である。

したがって、被告の本案前の抗弁はいずれも失当である。

[第二頁~第三頁]—原告請求の原因

被告は、本件キャラクター削除の根拠として、本件利用規約(甲1)のうち、

15.禁止事項「(g)中傷・嫌がらせ・わいせつ等、他のユーザーが嫌悪感を抱く、又はそのおそれのある内容の掲載・開示・送信等の行為」

9.裁量による情報の削除

(2)当社は、以下に該当する場合には、アップロード情報を、いつでも、当社の裁量において、当該ユーザーへの事前通知を行なうことなく、削除することができるものとします。」

(b)アップロード情報が、当社又は他のユーザーに何らかの不利益・迷惑等を及ぼすものであると当社による認められる場合。

を挙げた。

また、被告は、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」(以下「準則」という。)Ⅰ-1-2を根拠に、GAMECITY市民登録画面において「ご承諾いただける場合には『承諾する』ボタンをクリックし、登録ページへお進みください。」などと記載してある本件利用規約に拘束力が認められると主張する(被告第1準備書面6頁)。

しかし、準則Ⅰ-1-2 1.の「利用規約が明瞭に表示されている」というためには、利用規約が長文となり一画面上で一覧できないときには、規約全文をスクロールすることにより閲読した場合でないと「承諾する」ボタンにたどり着くことが出来ないものである必要がある。

ところが、本件規約での本件禁止条項はスクロールボックス内の規約を下にスクロールしなければ表示されないようになっているのに対して、「承諾する」ボタンは、スクロールボックス内の規約を下にスクロールしなくても、これをクリックすることにより次の画面に進めるようになっていることから、利用規約が明瞭に表示されているとはいえない。

したがって、被告の主張は失当である。

[第三頁~第四頁]—本件禁止条項が消費者契約法等に違反することについて

 本件禁止条項は、「当社による認められる場合」、「当社の裁量において」など、運営者側の一方的判断により解除や利用者の利用行為の禁止をなし得るものとなっている。

 なお、被告は、原告からの再三の問い合わせにもかかわらず、「具体的にどのようなキャラクター名が、規約違反に該当するかにつきましては、あらかじめご案内はいたしておりません。」(甲7)、「当社としては、当該理由を具体的に説明すべき必要性はないと思料します。」(甲9)と、本件禁止規約の文言どおりの運用を行なっている。

 このような文言は、従来の銀行取引約定書(第5条)や契約の内容が定型化されている保険約款(第10条)などにおける解除事由や期限の利益喪失事由が、「当社により認めた場合」などとなっているのではなく、その事由が客観的に存在する場合に限定していることと比較して、消費者の権利を著しく制限するものである。

 しかも、保険約款等は消費者との間に限定されず事業者との間の契約においても利用されているのに対して、本件利用規約は、オンラインゲーム利用者というもっぱら消費者との間でのみ利用されているものであるから、より契約者の保護を図らなければならない事情が存在する。

 さらに、「当社又は他のユーザーに何らかの不利益・迷惑等を及ぼすもの」、「他のユーザーが嫌悪感を抱く、又はそのおそれ」という文言はそれ自体判断基準が極めて不明確であり、このような不明確な事項に該当するか否かを運営側が一方的に判断できるとの条項は、消費者契約法第10条により無効となる典型例である、「当社の都合によりいつでも解約できます。」との条項と同様である。したがって、本件禁止条項は、消費者契約法第10条に違反し、無効である。

 また、前述のように本件禁止条項はスクロールボックス内の規約を下にスクロールさせなければ表示されない位置にあるほか、本件規約は長文かつ複雑なうえ、本件禁止条項のように曖昧な文言が多数存在する。このような見えにくい位置にあり長文難解な表現により隠蔽された不利益条項は、「事業者は契約条項につき消費者にとって明確、平易なものにするよう配慮し…」との消費者契約法3条に違反する。このような消費者契約法の趣旨または信義誠実の原則(民法1条2項)からも、本件禁止条項の効力は否定されるべきである(準則Ⅰ-1-2 2.(2)③「長文難読なサイト利用規約の有効性」参照)。

[第四頁~第五頁]—本件禁止条項について原告に錯誤があることについて(規約に同意する≠運営を『神』として認める)

 被告は、本件利用規約を約款と位置づけ、大判大正4年12月24日や、信用金庫取引約定書普通契約約款に関する最判昭和60年7月16日を援用する(被告第1準備書面8頁)。

 しかしながら、監督官庁の認可を受けなければならない保険約款や信用金庫取引約定書等と異なり、運営者側で自由に制定し得る本件利用規約においては内容の合理性に関する担保が何ら認められない。

 実際に、保険約款等と異なり本件利用規約はその大部分が被告に有利な一方的な免責規定であり、その内容の合理性には極めて疑問がある。さらに、インターネット取引は新しい取引形態であり現時点で商慣習が成立しているとはいえない(「準則」Ⅰ-1-2 2.(2)②)から、上記判例の事案と本件利用規約とを同列に論じることはできない。

 また、原告は、本件禁止条項が、被告が「違反行為」と判断しさえすれば、その判断の合理性を問題とすることなくいかなる場合でも削除が認められるものであるとの内容であることを知らずに「承諾する」ボタンをクリックしたものであるから、原告に錯誤があるものとして本件禁止条項は無効である。

[第五頁~第六頁]—-本件削除行為の違法性について

 被告は、「Gestapo」との名称がナチスドイツ、ホロコースト、虐殺等を連想させ、他人に不快感を与える可能性があるなどと主張する(被告第1準備書面10頁)。

 しかしながら、原告は、単に「Gestapo」という単語が気に入っていたためキャラクター名としたに過ぎず、反民主主義的思想を有する者ではないことはもちろん、ナチスドイツやホロコーストを推奨する言動をしたこともない。また、本件ゲームにおいてはゲーム内でいわゆる「海賊行為」として他の利用者のキャラクターを攻撃してアイテム等を奪うことが可能であるが、原告は本件キャラクターを利用して他の利用者のキャラクターを攻撃するなどの「虐殺」類似の行為をとったこともない。

 そもそも、「意見表明の自由…を、自由で民主的な基本秩序を攻撃するために濫用する者は、これらの基本権を喪失する。」との闘う民主主義制度が採られているドイツ連邦共和国基本法(18条)と異なり、日本国憲法19条の思想・良心の自由は、民主主義を否定する思想であっても絶対的に保障されるものであり、ドイツにおいて禁止される一定のナチス用語の使用も日本においては禁止されていない。

 また、実際に日本においては、ドイツ等で禁止されているナチスドイツの軍服などが不特定多数人に対して公然と販売されている(甲12の1、甲12の2)など、ナチスドイツに関する表現に対する日本国民の抵抗感は皆無に等しい。

 しかも、ドイツにおいても、ナチスの宣伝をする行為やナチスの出版物の流布、一定のナチス用語の使用が禁止されている(ドイツ刑法典(StGB)130条3項参照)ものの、禁止用語には「Gestapo」は含まれていない(甲13)。現にドイツと同様にナチスの宣伝等が法律(ゲソー法等参照)で禁止されているフランスには「Gestapo 666」という名称のバンドが存在し、ドイツ等においてもその作品が公に販売されている(甲14、甲15)。

 このように「Gestapo」との用語の使用は日本においてはもちろんドイツ等のヨーロッパ諸国においてすら禁止されていないこと、さらに、わが国におけるナチスドイツに関する表現に対する国民の意識に鑑みれば、「Gestapo」との用語の使用そのものが他者に不快感を与えるものでないことは明らかである。

[第六頁~第八頁]

 被告は近接したキャラクターのキャラクター名が他の利用者の画面上に表示され、チャットにもキャラクター名が表示されることにより、キャラクター名が不特定多数人に認識されるなどと主張する(被告第1準備書面10、11頁)。

 しかしながら、本件ゲームにおいてはチャットにおける会話を表示しないように設定することが可能である(乙3図面12、甲16の「プライバシー設定」で、「すべて遮断」を選択すれば、完全に別のキャラクターとの交信を遮断でき、運営会社である被告からのお知らせと自ら行った行動以外は、他のキャラクターの発した言葉・行動は一切チャットウィンドウに表示されない。)。

 接近したキャラクターのキャラクター名が表示される点についても、利用者の画面上から当該キャラクターがいなくなれば表示されないなど、その表示は一時的なものであるばかりか、キャラクター名の表示方法も他の文字と重なるなど非常に見づらいものである(乙3画面25等)。

 さらに、本件ゲームを実際に利用しているほとんどの利用者の目は、ゲーム内で被告側で操作している冒険者依頼仲介人などのノンプレイヤーキャラクターとの会話の内容や自己のゲーム世界内での位置関係、所持品等の表示に向けられており、他の利用者のキャラクターの名称などに関心を示す者はほとんどおらず、いわばどうでもよい情報である。そのようなどうでもよい情報の中に一瞬ナチスドイツの秘密警察を連想させる文字が表示されたとしても、ほとんどの利用者は、その表示自体にそもそも気付かないか、気付いたとしても不快感を示すことはないはずである。

 実際、原告は、平成18年9月10日の本件キャラクター作成以降、平成20年7月30日に削除されるまでの約2年間、他の利用者からチャットで苦情を言われたり他の利用者と接触した際に苦情・妨害を受けたりしたことはなく、そのこと自体、他の利用者が「Gestapo」の名称に不快感を有していないことを示している。

 さらに、被告自身が開発し現在でも流通している「ヨーロッパ戦線」というゲームにおいては、ヒトラーが「フランスに侵攻せよ」などと述べる場面(甲17の1)や、ナチス親衛隊の略称である「SS」などのナチス関連用語が多数使用されているほか、ゲーム内容そのものが、利用者が枢軸軍の軍団長としてプレイし、ヨーロッパを侵攻していくものとなっている(甲17の2、甲17の3)。また、被告が開発し現在も販売している「提督の決断Ⅳ」においても、「ドイツ第三帝国」との用語やナチスドイツの軍服やナチスの党章ハーケンクロイツに類似する紋章が多数登場するほか(甲18の1)、ゲーム内容そのものが、利用者が「ドイツ第3帝国」軍を選択して重要海域全ての制海権獲得という、いわば世界征服を目指すものとなっている(甲18の2)。他にも、同じ「提督の決断」というシリーズのゲームの他の三作品である提督の決断Ⅰ、Ⅱ、Ⅲでも、ヒトラーなど、ナチスドイツの用語等が頻出している。

 もし被告が主張するように、ゲーム内の一利用者がナチスドイツの秘密警察を連想させる名前をキャラクター名としただけでそれをたまたま目にした他の利用者が嫌悪感を抱くのであれば、被告の開発したこれらのゲームは、ゲーム上のナチスドイツを直接表す標記を利用者全員が必ず目にする点で、より多数の利用者により絶大な嫌悪感を与えるものであり、これらのゲームを購入する者は存在しないはずである。ところが、これらのゲームは多数の利用者に購入されており、「提督の決断」に至ってはシリーズ化し、四作品も製作・販売されている。このことは、被告が開発したゲームを利用する利用者は、被告が開発したゲーム内でナチスドイツを連想させる用語が登場することに嫌悪感を有していないということを示している。

 また、被告が開発・販売するゲームの多くが戦争をテーマにしたものであり、かつ、その多くにナチスドイツまたはそれを連想させる文言、図形が登場している以上、被告が開発したゲームを利用する利用者は被告の開発・販売するゲームにおいてナチスドイツが登場することを期待しまたは少なくともナチスドイツを連想させる用語を用いることが許容されているものと考えるのが自然であり、本件ゲームにおいてのみナチスドイツを連想させる用語を使用することが一切禁止されるというのは、被告が開発したゲームを利用する通常の利用者の意思に著しく反する。

[第八頁~第九頁]—被告のゲーム空間管理権について

 被告は、多数の利用者が共有できるゲーム空間を利用者に快適に楽しんでもらえるような空間として維持することに重要な利益を有しており、ゲーム空間を管理する権利を有しているなどと主張する(被告第1準備書面12頁)。

 しかしながら、被告が主張するゲーム空間管理権の根拠が不明であるばかりか、快適なゲーム空間の内容も極めて曖昧であり、かかる曖昧な概念をもとに具体的な権利として定立したうえ利用者の権利を制限することは不適当である。

 そもそもゲームソフトはプログラムである以上、運営者がゲーム内で禁止したい行為はあらかじめ操作できないようにプログラムしておくことが可能であり、本件のように、「他のユーザーが嫌悪感を抱く」名称をキャラクターの名称とすることを禁止したいのであれば、当該名称によりキャラクター登録が出来ないようにプログラムすれば足りるものである。

 本件ゲームにおいては、被告が「他のユーザーに何らかの不利益・迷惑等を及ぼす」、「他のユーザーが嫌悪感を抱く…おそれがある」などの理由で適切ではないと考える名称をキャラクター名として入力した場合、「その名前は適切ではありません。」と表示されキャラクター名として登録することが出来ないようになっている(甲19)。「Gestapo」はキャラクター名として登録が可能であるが、被告が真に「Gestapo」をキャラクター名として使用すること自体が本件禁止事項に該当すると考えるのであれば、キャラクター登録の際にその名前を登録できないようにしておくことで足りたはずである。また、被告がキャラクターの名称として適切でないと考える用語を登録できないようにキャラクター登録画面においてキャラクター名の入力フォームに一定の入力制限を設けることは、システム開発の知識・技術を有する被告にとっては極めて容易になし得る。  したがって、被告が主張するゲーム空間管理権は、キャラクターの名称に関しては、キャラクター名の入力フォームの入力制限を設けることで行使すれば足り、一旦登録が認められた以上、被告のゲーム空間管理権は及ばない。

 さらに、被告が本件キャラクターを削除したのは本件キャラクターが作成されてから2年近く経過した後であるが、被告は本件キャラクターのキャラクター名を、本件キャラクターのレベル等が上昇する前のより早い段階において容易に発見することが出来たはずである。キャラクター登録の際に「Gestapo」との名前を登録できるようにしておき登録を一旦認め、その後2年間近く削除せずに原告から利用料を徴収し続け、キャラクターのレベル等が十分に上昇した段階において、突如として「Gestapo」が本件規約に違反するとして削除することは、ゲーム空間管理権の濫用であり、到底許されない(民法1条3項)。

 しかも、少なくとも平成21年2月20日時点において、本件ゲーム内で、「SS」やナチスドイツ秘密警察ゲシュタポを創設したとされる「ゲーリング」、アウシュヴィッツ強制収容所の所長でナチス副総統のルドルフ・ヴァルター・リヒャルト・ヘスの略称である「ヘス」というナチスドイツを連想させるキャラクター名を付したキャラクターが存在する(「SS」、「ゲーリング」については複数のサーバ上に存在する。)が、これらのキャラクターに対しては現段階で何らの処分もなされていない。

 一方で「Gestapo」との名称が本件禁止事項に該当すると主張し削除しながら、他方で「SS」などよりナチスドイツを連想させるキャラクター名を付したキャラクターを放置する被告の対応は、本件削除行為が何らの理由もなく恣意的になされたものであることを示しており、かかる見地からしても本件削除行為はゲーム空間管理権の濫用であることは明らかである。

[第九頁~第十二頁]—手続面について

 被告は、原告に対して本件規約違反を警告しているにもかかわらず、原告がこれを無視して本件ゲームの利用を続けたことから削除したものであり、手続的にも問題ない旨主張する(被告第1準備書面13頁)。

 しかしながら、そもそも原告は被告が主張する警告(乙11)を見た認識がない。

 本件ゲームは、登録した利用者がゲームを開始しようとする場合、数回、多いときは10回も各種のお知らせ等の表示が登場する。その場合、利用者は「OK」ボタンをクリックし続けるか、右クリックして次に進まなければゲームを開始することが出来ないようになっており(甲23)、かつ、その多くが毎回表示されるものと同様である。そのため、通常の利用者は、早くゲームを開始するためにお知らせ等の内容を読まずに「OK」ボタンを連射または右クリックしているのが実情である。被告が表示したと主張する警告画面も「OK」ボタンを連射するなどの一連の定型的作業の途中で一瞬表示されたものに過ぎず、書面や電子メールなどのように原告が後に再度内容を確認できる性質のものではない点で、警告として極めて不十分である。

 また、警告の内容についても、利用者に違反行為を認識させ、自ら削除する機会を与えるための手続として極めて不十分である。この点、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)第3条第2項は、特定電気通信役務提供者が電子掲示板への書き込みを名誉毀損等の理由により削除した場合の免責の要件として、権利を侵害されたと主張する者から、

(ⅰ)情報を特定し、
(ⅱ)侵害されたとする権利及び権利侵害の根拠を示して、削除等の要求があった場合は
(ⅲ)発信者に対して、削除要求の対象となっている情報と権利侵害の根拠を通知し、
(ⅳ)発信者から7日以内に削除に同意しないという申出を受けない場合を挙げる。

 そして、「プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」は(ⅲ)の照会手続は、配達記録郵便等の確認手段を用いた書面による照会が推奨されており、侵害されたとする権利、その理由の記載についても詳細なものを要求し、さらに、発信者からの送信防止措置に対する回答書の送付も要求されている(甲24)。これに対して被告が行なったとする警告は、権利を侵害されたと主張する者からの申出に基づくものではないばかりか、単に「お客様のキャラクター名が、下記の通り規約に違反しています。」との一文のみで、キャラクター名がなぜ規約に違反しているのかなどのついての理由が全く記載されておらず、仮に利用者がこの警告文を見ても自己の行為がなぜ規約に違反しているのかを全く判断することが出来ない点で極めて不十分である。

 さらに、被告が行なったとされる警告は、原告自ら削除しない限り被告が削除することが断言されており、原告が削除を免れるための方法は存在しないこと、表示される際に「OK」以外のボタンが存在しないことから警告としての意味を全く有しない。

 また、被告は、警告の対象となったキャラクターは削除する以外ないものの、各種アイテムを原告が所有する別のキャラクターに移行することが可能であると主張する(被告第1準備書面13頁)。  しかしながら、キャラクターの名前、称号・ステータス、スキル、使用言語、プライベート・ファーム等本件キャラクターの有する重要な属性は他のキャラクターに移行することは出来ない。また、原告が所有する別のキャラクターは本件キャラクターと同一アカウントであるが、同一アカウントの2つのキャラクターを同時にログインさせることは出来ないから、これらのキャラクター間で各種アイテム(所持金・所持品)を移行することも出来ず、被告の主張は失当である。

 また、被告は平成20年6月21日から7月30日まで1ヶ月以上の猶予期間を与えたものの、漫然と警告を無視して本件ゲームの利用を続けていた旨主張する(被告第1準備書面13頁)。

 しかしながら、本件キャラクターの課金は平成20年7月19日午前0時に一旦切れており、削除されたとされる7月30日は課金期間中ではなかったことから、この間、原告が本件ゲームを利用し続けたとの主張は適切でない。

 さらに、被告は本件キャラクターを削除したのは定期メンテナンス時であると主張する(被告第1準備書面13ないし14頁)が、被告はいわば定期メンテナンスのついでに本件キャラクターを削除したものであり、被告が原告に当初から1ヶ月間の猶予を与える予定で警告を発したものではない。被告は原告に対して漫然と警告を発し、その後放置していたところ、定期メンテナンスの際に警告したことを思い出し、削除したものである可能性が高い。

 そして、被告が本件削除行為を直ちに原告に対して知らせなかった点でも、手続的に極めて問題がある。

 すなわち、本件削除行為は原告の課金期間中でない平成20年7月19日から平成20年8月21日の間である平成20年7月30日に行なわれていたものでる。原告は、平成20年8月21日に本件削除行為を知らされない状態で本件キャラクターを使用するため再び利用料金を支払い、ゲームにログインしたところ本件キャラクターが消失していたため、原告に問い合わせたところ、初めて被告が削除したことに気付いたものである(甲25の1ないし甲25の4)。原告は本件キャラクターにより本件ゲームをプレイする予定で再度利用料金を支払ったものであり、本件キャラクターが削除されたという事実を課金前に知っていれば、平成20年8月21日に料金を支払うことはなかったのであるから、被告は、たとえ原告が課金期間中でないとしても、原告に対して本件削除行為を直ちに文書等により知らせ、原告が削除されたキャラクターを使用するために課金することを防止すべき義務があった。しかしながら、被告はかかる義務を怠り、原告が課金後に問い合わせるまで本件削除行為を原告に対して知らせなかったのであるから、被告の本件削除行為は何ら合理的な手続が踏まれているとはいえない。

[第十三頁]—結語

 被告は、本件キャラクターが削除されても、他のキャラクターで引き続き本件ゲームのプレイができ、他のキャラクターを作成してプレイすることも可能である旨主張する(被告第1準備書面14頁)。

 しかしながら、これらの理由により本件削除行為やこれに伴う被告の一連の行為・対応が適法とされることはない。

 本件ゲームは、利用者が一旦ゲームを中断しても、前回までのゲームの結果得られた能力値等は被告サーバ内の記録媒体に記録され、後日、ゲームを再開する際には、前回までに自分が育成したキャラクターのデータを使用してゲームを進めることが出来る点に特徴がある。したがって、前回まで自分が育成したキャラクターのデータを使用できなければ、別のキャラクターあるいは初期設定のキャラクターを使用できたとしても全く意味はなく、被告の本件削除行為が違法であるとの評価は変わらない。

 以上より、被告の本件削除行為とこれに伴う一連の被告の行為・対応は債務不履行又は不法行為に該当する。

 特に、被告が本件削除行為を直ちに原告に知らせずに、事情を知らない原告が課金するのを放置したことは極めて不適切な行為であり、被告の本件削除行為及びその後の通知を行なわなかったという事情については強度の違法性があるものであるから、債務不履行を構成するのみならず不法行為をも構成することは明らかである。

以上

[第十三頁~第十四頁] 証拠方法の説明

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