支援者・地裁での第5回出廷—その2

[第二十一頁~第二十四頁]— 被告の行為がプロバイダ責任制限法の趣旨に反することについて

通常のインターネットサービスプロバイダ(以下「ISP」という。)は、自己の権利を侵害されている者から削除の依頼が来た場合には、たとえ、「発信者」との規約上、ISPの裁量によりいつでも情報を削除し得るとの条項が存在する場合であっても、独断で直ちに送信防止措置を採ることはしない。

この場合、ISPは、プロバイダ責任制限法3条2項2号の免責を受けるべく:

(ⅰ)権利を侵害されたと主張する者に対して情報を特定するよう求める

(ⅱ)侵害されたとする権利及び権利侵害の根拠を示した書面を記載させた上

(ⅲ)発信者に対して、削除要求の対象となっている情報と権利侵害の根拠を配達記録郵便等により通知し

(ⅳ)発信者から7日以内に削除に同意しないという申出を受けない場合に初めて送信防止措置を採る。

(ⅴ)送信防止措置も、技術的に可能な限り、権利侵害を防止するために必要な限度にとどめ、

(ⅵ)事後に送信防止措置を採った旨を発信者に対して通知する

のが通常の対応である。

ところが、被告は、本件ゲームの利用者のいずれからの申出もないにもかかわらず、独断で、本件禁止条項に違反すると判断しており、上記(ⅰ)、(ⅱ)に相当する事情は何ら存在しない。また、(ⅲ)のような配達証明郵便はもちろん原告側に記録が残る電子メールですらなく、画面上に一瞬表示されるに過ぎない警告を表示するにとどまり、その内容も、本件禁止条項が示されているのみでなぜ規約に違反しているのかなどの理由が全く記載されていないばかりか、一方的に原告自ら削除しない限り被告が削除することが断言され、「OK」ボタンしかなく原告が内容の交渉することはもちろん、承諾しない自由もない。

さらに、被告は、キャラクターの名称のみの変更が技術的に可能かつ容易である(甲35)にもかかわらず、本件キャラクター全体を削除している((ⅴ))。

しかも、被告は原告に対して、本件キャラクターを削除した旨の通知すら行なわず、原告が本件キャラクターでゲームをプレイするために課金することを防止する措置((ⅵ))も採られていない。

このように被告の対応はISPがプロバイダ責任制限法上の免責を得るために通常行なう手続に比べて極めて不十分である。

この点、被告は、本件規約において事前の通知は要求されていないとし、また、自己がプロバイダ責任制限法上の「特定電気通信役務提供者」に該当しない、第三者から削除要求を受けたため送信防止措置を採ったことに基づく損害賠償請求の場面ではないとの理由により、プロバイダ責任制限法が参酌される余地はない旨主張する。

しかしながら、一部解除の場合に事前の催告を要しないとの本件禁止条項は消費者契約法10条により無効であるから、事前の催告を要する。

また、被告のように自らのサーバを利用してゲーム利用というサービスを提供しているコンテンツプロバイダもプロバイダ責任制限法2条3号の「特定電気通信役務提供者」に該当するから(甲37、甲38)、自己がプロバイダ責任制限法上の「特定電気通信役務提供者」に該当しないとの被告の主張は明らかに誤っている。

さらに、本件ゲーム内でキャラクターに名前を付した利用者は同法2条4号の「発信者」に該当するので、キャラクター名が第三者の権利を侵害するものであり当該第三者から送信防止措置を講ずるように要求があった場合には、プロバイダ責任制限法3条2項2号の適用が問題となり、通常のISPであれば、発信者と削除要求をした第三者の両者からの責任追及を回避するため上記(ⅰ)ないし(ⅵ)の手続を講じる。これに対して、本件キャラクターの名称のように何ら特定の他人の権利を侵害するものではなく、わいせつ物陳列のような刑法上の犯罪を構成するものでもない場合には、被告は送信防止措置を採らなかったからといって誰からも責任追及される立場にはない。

にもかかわらず、今回の被告のような手続で十分であると判断されるのでは、プロバイダ責任制限法3条2項2号の適用が問題となる場面と比べて著しく不均衡であるばかりか、発信者と権利を侵害されたと主張する者の両者から責任を問われる可能性があった特定電気通信役務提供者に一定の免責を認めたプロバイダ責任制限法の制定趣旨に著しく反する。したがって、キャラクター名が特定の個人の権利を侵害せず第三者から削除要求も受けていないのであれば、それが存在する場合以上に、発信者である原告に対して十分な照会手続をとるべきであり、第三者から削除要求を受けていないとの一事でプロバイダ責任制限法の趣旨が全く参酌されないとの被告の主張は失当というほかない。

被告の対応が「特定電気通信役務提供者」の対応としていかにあり得ないかは、ISPが必要な送信防止措置をとらなかった場合に権利を侵害されたと主張する者から訴訟を提起された事例に関する裁判例がプロバイダ責任制限法施行の前後を問わず多数存在するのに対して、本件のように送信防止措置をとったために発信者側から責任追及された事例に関する裁判例は見当たらないこと、したがって、ISPがプロバイダ責任制限法3条2項の手続をとった上で送信防止措置を講じたか、そもそも送信防止措置を採らなかった場合が圧倒的に多いため、発信者との間で紛争が生じることがほとんどないことからも明らかである。

被告は、自らが「特定電気通信役務提供者」に該当することの自覚すら欠き、通常のISPが行なう対応に比べて極めて不十分な手続により原告の権利を侵害しているのであるから、被告の主張するゲーム空間管理権の濫用であると共に、本件削除行為には極めて強度な違法性が認められる。

[第二十四頁]— 被告の債務不履行

原告は、本件使用許諾契約に基づき、本件ゲームの著作物の使用形態として、自己が育成したキャラクターを使用する権利を有するとともに、被告は、本件使用許諾契約において、利用者が育成したキャラクターのデータを適切に記録し保護する義務を負う。ところが、被告は上記のように本件禁止条項に違反する事実が何ら存在しないにもかかわらず、故意に本件キャラクターを削除したのであるから、被告には本件使用許諾契約上の義務に違反する重大な違法行為がある。

[第二十四頁~第二十五頁]— 被告の不法行為

被告の本件削除行為は、原告の本件キャラクターの使用権を侵害するに留まらず、表現の自由(憲法21条1項)という国民の基本的人権を侵害する行為である。すなわち、原告が格好いいプレイヤーを目指すべく「Gestapo」との名称を気に入り、内心活動の一環として外部に表示し使用する権利も表現の自由により保障されるところ、本件削除行為は原告の表現の自由を侵害する。

そして、表現の自由(憲法21条1項)は自己の人格を発展させるという個人的な価値(自己実現)等を有する権利であり、国民の基本的人権のなかでも最も尊重されなければならない重要な権利である。

なお、憲法の人権規定は私人間においても民法1条、90条、不法行為に関する諸規定等の適切な運用を通じて間接的に適用される(三菱樹脂事件最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁参照)のが原則であるが、被告が東証一部上場会社であるのに対して原告が個人であること、本件ゲームは被告が作成・運用するものであり、本件ゲーム空間内の利用者に対して国家的立場に立つことから、被告の利用者に対する本件ゲーム空間内での人権侵害行為に対しては、憲法の人権規定が直接適用されるか、少なくとも、人権侵害行為に該当することにより被告の行為の違法性の裏づけが強化される。

さらに、

①        キャラクター名称の変更を選択しうる被告が名称変更を認めずキャラクター自体を削除することは原告の本件ゲームを利用する機会を奪うに等しい重大な影響を及ぼすものであること

②        いったん登録を認めたにもかかわらず、長期間黙認放置しキャラクターのレベル等が十分に上昇した段階において突如行なわれていること

③        他のナチスドイツを連想する用語を用いたキャラクターを放置し、殊更に原告のみに対して課していること

④        被告が自ら不明確な規約を制定しながら、キャラクター名として使用できる用語の照会に応じないなど再度の紛争防止に向けた処理を怠っていること

⑤        被告が一方でナチスドイツの顧客吸引力を利用しつつ原告に対してはナチスドイツを連想させる表現を禁止するという矛盾した行動をしていること

⑥        通常のISPの行う送信防止措置に比べて、手続的にも極めて杜撰であること、特に削除した事実について原告に通知せず、原告が本件キャラクターを再度プレイするために誤って再課金することを防止する義務を怠り返金もしないこと

などから本件削除行為は強度の違法性を有するものであり、不法行為を構成する。

[第二十五頁~第二十六頁]— 原告の損害-1.財産的損害

オンラインゲームのアイテムは、現実世界において現実世界の売買の対象とされていること(リアルマネートレーディング)などから財産的価値を有することは明らかである。高松地判平成18年11月17日の判例も、オンラインゲーム上のアイテムを詐取する行為について刑法上の詐欺罪の成立を認定している。また、キャラクターのレベル、スキル等キャラクターから切り離して譲渡することができない場合であっても、本件ゲームの利用者の中には、他者に対価を支払ってキャラクターの育成を代行させる者が存在しその育成代行を業として行なっている者も存在することなどから、本件ゲームのキャラクターのレベル、スキル等自体にも財産的価値が認められる。

そして、本件キャラクターの財産的価値を現実世界の金銭で評価すると、育成代行業者に依頼して育成する場合の見積額が120万円乃至144万円である(甲6)。ただし、被告は本規約15.(c)、(i)、(r)、18.などにより育成代行行為を禁止しているため、本規約に同意した上で原告自身が本件キャラクターと同様のキャラクターを再度育成するための費用を計算すると、原告が現時点で本件キャラクターと同様のキャラクターを再度育成するためには1800時間以上を要すると思われること、かつ、原告の給与は1時間当り3000円以上であるから、当該費用は540万円を下らない(甲41(20頁)添付書類19)。岡山地判平成14年11月12日(甲39)は、代替性のない電子データの消失に関する損害について、復旧に要する時間に時間当たりの単価を乗じた額を損害額として認定している。

以上より、本件キャラクターの財産的価値は540万円を下らないが、原告はその一部として120万円を請求する。

[第二十六頁~第二十九頁]— 原告の損害-2.精神的損害

原告は被告の債務不履行又は不法行為により以下のように精神的苦痛を受けた。その精神的苦痛を慰謝するための金額は150万円を下らない。岡山地判平成14年11月12日は代替性のない電子データの消失について、電子データの修復費用のほかに精神的苦痛に対する損害額として100万円を認定しており、電子データの消失事案においても慰謝料が認められ得ることは明らかである。

(1)原告の権利が憲法上の基本的人権に基づくこと

被告は、原告の自己のキャラクターに「Gestapo」と命名し外部に表示する表現の自由を侵害した。

また、原告は反民主主義的思想を有する者ではないが、特定の思想を有することを理由として不利益又は差別を受けない権利は思想・良心の自由、平等原則により保障されている。

そして、原告が、電子メール、内容証明郵便等で再三にわたり、被告に対して、思想・良心の自由等を侵害する旨の主張をするとともに削除の具体的理由の説明を求めた(乙10、甲41(添付書類4、5等))のに対して、被告は、予め明確な方針の下で削除したのであればその説明は極めて容易であるにもかかわらず、平成21年2月20日付第1準備書面の提出まで、原告の思想を理由にキャラクターを削除したものではないという削除の具体的理由の説明がなされることはなかった。

このような被告の対応により、原告は自己がナチスドイツの思想を有する者と決めつけられ、かつ、当該思想のみを理由として本件キャラクターの削除という不利益を課された結果、思想・良心の自由を侵害されたものと感じ、同時に、信条を理由として不平等な扱いを受けたと感じた。

このように、原告が現に侵害され、また侵害されたと感じた権利は表現の自由(憲法21条1項)、思想・良心の自由(憲法19条)、平等権(憲法14条1項)という極めて重要な権利であり、国家に匹敵する機関である被告からの人権侵害行為に対して原告は多大な精神的苦痛を受けた。

(2)原告が本件キャラクターを努力の結果育成したものであること

原告は、キャラクター名に関して憲法上の人権を侵害されたに留まらず、自己が2年近くかけて育成した本件キャラクターのデータをも削除された。原告は長時間を費やし努力の結果育成したものであり、今後も本件キャラクターを継続してプレイする予定であったが、本件削除行為により、二度と本件キャラクターで本件ゲームをプレイすることが不可能となった。このように原告にとって非常に愛着のあるキャラクターを削除されたことにより、原告は極めて大きな精神的苦痛を受けた。

(3)被告の対応

原告は、本件削除行為後の以下の被告の対応についても大きな精神的苦痛を受けた。

まず、原告は、再三にわたり詳細な理由を述べた上でその説明を求めると共に、使用可能なキャラクター名を問い合わせたのに対して、被告は「あらかじめご案内はいたしておりません。」、「利用規約に抵触するかどうかは、お客様ご自身でご判断いただくものとなります。」(甲7、甲41(添付書類9))などと回答した。このような一旦トラブルになった利用者に対する更なるトラブルを避けるための最低限の努力すらしないことを表明する被告の対応に対して原告は大きな精神的苦痛を受けた。

また、本件禁止条項該当性自体について被告が基準を示さないばかりか、被告が利用者のキャラクターを自己の裁量でいつ何時でも削除することができるとの対応を示したこと、被告が平成20年11月13日に制定した「大航海時代 Online」サービス利用規約が、その制定時期からして、本件削除行為に関する紛争を契機として制定されたと考えられ、これにより利用者がさらに不利な立場に置かれると考えられたことなどから、原告は、いつ何時被告からもう一方のキャラクターや自己が新しく作成するキャラクターを削除され、またはユーザ登録自体も取り消され、本件ゲームを利用することが出来なくなるのではないかという危惧感を有するようになった。
つまり、被告コーエーはいつでも契約の新制定、改訂ができ、あらゆる今日までは「合法のこと」を、明日にでも「違法」にして、垢バンできるわけです

さらに、原告がキャラクター名として「Gestapo」を使用することが本件禁止事項に該当することの具体的な説明を求めても(甲8)、被告は通じて「具体的に説明すべき必要性はない」旨の回答(甲9)をし、訴訟外で全く対応する意思がないことを表明した。

かかる対応は、一消費者にすぎない原告が大企業である被告に対して訴訟により対応することを強いるものであり、原告は、訴訟の準備のために更なる時間・費用を費やすことを強いられた。原告が被告との交渉及び訴訟のために費やした時間・費用は莫大なものであり、原告は被告のかかる対応のため極めて強い肉体的・精神的ストレスを受けた。

(4)その他の事情

本件削除行為が、いったん登録が認められ長期間黙認されキャラクターのレベル等が十分に上昇した段階において突如行なわれたこと、他のナチスドイツを連想する用語を用いたキャラクターを放置し、殊更に原告のみを削除対象としていること、被告が削除後の通知を怠った結果、原告は本件キャラクターを使用するつもりで再度課金していること、サーバの故障などではなく削除自体について被告に故意があり、しかも、Rescue会議のメンバーら原告の多くの知人が被告から合理的根拠のない処分を受けたため、原告自身を含め、他の原告とは無関係である大勢の利用者から、すでに被告に対して再三抗議したにもかかわらず、被告は全く反省することなく原告に対しても同様に合理的根拠のない処分をしたことについても、原告は極めて大きな苦痛を受けた。

[第二十九頁]— 原告の損害-3.弁護士費用

原告が上記の損害を回復するために支出した弁護士費用は30万円を下らない。

以上。

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